①不動産編
相続税の申告期限内における小規模宅地等の譲渡は特例適用なし!?
相続税の申告期限は相続開始後10ヶ月ですが、遺産分割協議が思いのほか順調に進んだため、申告期限内に相続で取得した自宅敷地を売却される方がいます。ここで、売却した自宅敷地が小規模宅地等の特例の適用を前提とした土地であった場合には、どのような事態が想定されるでしょうか。売却した本人は、もちろん特例の適用は受けられると思っています。
しかし、残念なことにこのようなケースでは、小規模宅地等の特例を使うことはできません(配偶者が自宅敷地を相続した場合を除く)。なぜなら、小規模宅地等の特例には「申告期限まで所有を継続」という適用要件があるからです。恐らく、自宅を売却された相続人には、やむを得ない何かしらの事情があったのでしょう。
なお、配偶者が自宅敷地を取得したケースでは、上述のような制限はありません。したがって、申告期限の10ヶ月を待たずして自宅敷地を売却したとしても特例の適用は可能です。配偶者については、相続を契機に自宅敷地を売却して、他の親族の家に移り住んだり、老人ホームに入居したりするケースも多いことから、税制面での保護が必要と税務当局は考えているのでしょう。
したがって、このようなケースに遭遇した場合には、不動産譲渡の契約は相続税の申告期限内に行ったとしても、引き渡しは申告期限後に行うよう助言する必要があります。たとえ不動産譲渡の契約が申告期限内であっても、引き続き申告期限後まで住み続け、その後に引き渡しを行った場合には、小規模宅地等の特例の「所有と継続」の適用要件を満たすものと考えられているからです。