2024.04.18更新

「死因贈与」とは贈与する人(贈与者)と、貰う人(受贈者)との合意(契約)に基づいた贈与の一種で、贈与する人が死亡した時にその贈与の効力が生じる法律行為です(民法第554条)。

 

これに対して生きている間に財産を渡すことを「生前贈与」といいます。また、一方で、財産を渡す人が亡くなったことを原因に財産を無償で渡す法律行為に「遺贈」があります。「遺贈」とは、自分が亡くなった時に、自分の財産を他の人に渡すことを遺言書に明記することによって、財産の移転をすることをいいます。

 

このように「遺贈」「死因贈与」はどちらも財産を渡す人が亡くなったことを起因として行われる法律行為であることから、税務上においては相続税の課税対象となるという点では同じです。しかし、「遺贈」は財産を渡す側による一方的な意思表示を原因としますが、「死因贈与」は財産を渡す側と貰う側のお互いの意思の合意が必要となります。

 

このように両者の大きな違いは契約(合意)の有無ということになります。なお、登記の際の登録免許税や不動産取得税の観点からは、税務上の取り扱いと違い「遺贈」は相続として財産を貰うものとなりますが、「死因贈与」はあくまで贈与として財産を貰うものとなりますので、登録免許税や不動産取得税が高くなりますので注意が必要です。

 

よって、「死因贈与契約」は、①受取る資産を事前に知っておいて欲しい場合や、②介護などの条件付きで財産を渡したい時や、③法定相続人以外の人に財産を遺したい時などに活用されるケースが多いようです。

2024.04.09更新

相続登記とは、被相続人から不動産を相続した際に必要となる不動産の名義変更です。

ところが、近年、相続登記が行われないまま所有者が特定できない、いわゆる所有者不明の不動産が増加して社会問題となっています。

この事態の解消に向けて不動産の所有者を明確にする登記の義務化が決定されました。それが、新不動産登記法76条の2の新設です。

 

この法律では、令和6年4月1日より、次のとおり不動産登記の義務化を定めています。

 

相続による取得を知った日から3年以内の登記の申請が義務化され、違反すれば10万円以下の過料が科せられます。

対象となる相続登記は法改正移行に発生した相続だけでなく過去の相続も含まれるため注意が必要です。

したがって、過去に不動産を相続した方は名義変更が完了しているか確認が必要です。完了していない場合は、令和9年3月31日が相続登記の期限となります。

 

住所変更登記については、令和8年4月1日に施行されます。

氏名・住所等の変更があった場合、その日から2年以内に変更登記を行わない場合は、5万円以下の過料が科せられます。

 

なお、現在、登録免許税は最終取得者以外の相続登記については、免税措置が設けられています。

例えば、祖父の名義のままとなっていた不動産を父が相続登記をしないまま死亡した場合、最終取得者である相続人が相続登記をしようとすると、祖父から父への相続登記を行い、その後、父から自身への相続登記を行う必要があります。相続登記を2回分行うこととなります。通常であれば登録免許税を2回支払うことになりますが、免税措置により父から相続人への相続登記の登録免許税のみで登記が可能となります。

 

なお、この免税措置は令和7年3月31日までの時限措置となっています。過去の相続登記も義務化対象で罰則が付きますので、免税措置の期間内に、相続登記を完了されることをお勧めいたします。

2024.03.28更新

障害者が相続により財産を取得する場合、算出された相続税額から一定額を差し引くという税額控除の制度があります。これは、障害者の多くは親族の誰かの扶養になっていることから、扶養していた家族の死亡に伴い相続人である障害者に多額の相続税が課されると、その後の生活が立ち行かなくなります。それらを配慮して相続税の負担を軽減するのが障害者控除です。具体的には、相続人が85歳未満の障害者の場合に相続税の額から一定の金額を差し引きます。

 

障害者控除が受けられる人

 

障害者控除が受けられるのは次の全てに当てはまる人です。

 

(1) 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

相続などで財産を取得した時に外国に居住していて日本に住所がない人は、取得した財産のうち日本国内にある財産だけが相続税の課税対象になります。

ただし、次のいずれかに該当する人が財産を取得した場合には、日本国外にある財産についても相続税の課税対象になります。

 

1 財産を取得したときに日本国籍を有している人で、被相続人の死亡した日前10年以内に日本国内に住所を有したことがある場合か、同期間内に住所を有したことがなく被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人でない場合

2 財産を取得したときに日本国籍を有していない人で、被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人でない場合

 

(2) 相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人

 

(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。

 

障害者控除の額

 

一般障害者:10万円×(85歳―相続開始の年齢)
特別障碍者:20万円×(85歳―相続開始の年齢)

 

年数において1年未満の期間があるときは、1年切り上げて1年として計算します。
なお、その障害者が今回の相続以前の相続においても障害者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。

 

上記の計算式によって計算された障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きい場合があります。その場合、引き切れない部分の金額はその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。扶養義務者とは、配偶者と民法に定める3親等以内の直系血族(両親、祖父母や子、孫など)兄弟姉妹、家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった3親等以内の親族です。扶養義務者が2人以上いる場合は、扶養義務者全員の協議で控除額を決めます。

 

 

 

 

2024.03.15更新

相続税における「配偶者の税額の軽減」とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈によって実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

 

(1)1億6千万円
(2)配偶者の法定相続分相当額
                                                     (国税庁HPタックスアンサー)

 

上記の「配偶者の税額軽減」の制度は、被相続人の配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されますが、隠蔽または仮装されていた財産は含まれないこととなっています。

 

また、この制度を適用する条件として、①相続税の申告を行うこと②遺産分割をしていることが要件となります。したがって、二つの要件を満たしたところで、税務署に相続税の申告書の提出が必要ということとなります。仮に相続税の納税額が0円であっても申告書の提出は必要となりますので注意が必要です。

 

なお、相続税の申告期限までに分割されていない財産は、上記の②の要件を満たしていないので、この制度の対象になりません。ただし、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に相続税の申告書を税務署に提出する際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しますと、申告期限までに分割されなかった財産を申告期限から3年以内に分割したときは、この制度の対象になります。

 

このように「配偶者の税額軽減」の制度は、相続税の節税対策として極めて有効な制度です。しかし、具体的に遺産分割の際に一次相続での配偶者の相続の割合を決めるときは、税額軽減の適用による税負担の軽減を優先しがちですが、将来の二次相続のときの税負担を見据えて財産を分割して、できるだけ税負担を小さくすることを考慮して決めることが求められます。

2024.03.05更新

遺言とは人の最終意思を尊重する制度といわれています。遺言書の作成方法は民法で定められていますので、有効な遺言をするにはその定めに従って遺言書を作成しなければなりません。そして、遺言書の内容で法的な効力を持つ事柄は決まっています。これを法定遺言事項といいます。

 

法定遺言事項は、主に以下の事項が挙げられます。

 

・共同相続人の相続分の指定、または第三者への指定の委託
・遺産の分割方法の指定、または第三者への指定の委託、及び遺産の分割禁止
・遺産分割における共同相続人間の担保責任の定め
・推定相続人の廃除、または廃除の取り消し
・特別受益の持ち戻しの免除
・遺留分侵害額請求の負担方法の定め
・生命保険の保険金受取人の変更
・遺贈
・財団法人を設立する意思の表示
・信託の設定
・婚姻外の子の認知
・未成年後見人、未成年後見監督人の指定
・遺言執行者の指定、又は第三者への指定の委託
・祭祀を主宰すべき者の指定

 

また、法的拘束力はありませんが、遺言者の思いや希望を遺言に付記する「付言」により、遺言者の意思に沿った相続が行われることも多いようです。付言はメッセージですので、従う義務はなく自由に判断してよいものとされています。

2024.02.15更新

令和6年1月に国税庁は、令和4年分(令和4年12月31日時点)の「国外財産調書」の提出状況を公表しました。

 

「国外財産調書」は、日本国内に居住している方(非永住者の肩を除きます)で、その年の12月31日において、その価額の5,000万円を超える国外財産を有する場合には、その方の住所地等の所轄税務署に提出しなければならないとされています。

 

国税庁の公表の内容によりますと、上記の5,000万円を超える国外財産を所有し「国外財産調書」を提出した総件数は12,494件でした。そして、その総財産額は5兆7,222億円で、その内訳は有価証券が3兆4,569億円(構成比60,4%)、預貯金7,775億円(同13,6%)、建物4,842億円(同8,5%)、以下、貸付金、土地、その他の順となっています。

 

また、国税庁は令和4事務年度(令和4年7月~同5年6月)における所得税及び相続税の実地調査により、「国外財産調書」に関連する調査結果を次のとおり公表しました。

 

① 提出された調書に記載された国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じ、加算税を賦課(5%軽減(▲5%))された件数は146件で、その増差所得金額は40億6,433万円でした。
② 調書の提出がない場合、又は提出された調書に記載のない国外財産に係る所得税・相続税の申告漏れが生じたため加算税を賦課(加重(+5%))された件数は329件で、その増差所得金額は119億1,183万円でした。

 

2024.02.05更新

令和5年12月に国税庁より、令和4事務年度における相続税の実地調査の状況が公表されました。

 

それによると、実地調査件数は令和4事務年度(令和4年7月~同5年6月)で8,196件となり、令和3事務年度(令和3年7月~同4年6月)の6,317件と比べ前事務年度比129.7%と増加しました。

 

また、申告漏れ等の非違件数は令和4事務年度で7,063件となり、令和3事務年度の5,532件と比べ前事務年度比127.2%と増加しております。
なお、追徴税額合計は令和4事務年度669億円で令和3事務年度560億円と比べて増加しております。

 

更に、近年、国税庁が申告漏れ財産として、特に、注目している海外資産に係る実地調査件数は、令和4事務年度845件で令和3事務年度660件と比べ前事務年度比128%と増加しました。

 

その結果、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は令和4事務年度で174件となり、令和3事務年度115件と比較して151.3%と大きく増加しました。

 

最後に、実地調査とは別に、文書や電話による連絡又は来署依頼による面接などの簡易な接触も行われています。それによりますと、接触件数は15,004件で、その結果、申告漏れ等の非違件数は3,685件となっております。

2024.02.01更新

令和5年12月に国税庁より公表された令和4年分における全国の被相続人数(死亡者数)は1,569,050人(令和3年分1,439,856人)でした。

 

その内、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は150,858人(令和3年分134,275人)で、その課税価格の総額は20兆6,840億円(令和3年分18兆5,774億円)でした。

 

また、申告税額の総額は2兆7,989億円(令和3年分2兆4,421億円)で課税価格・申告税額ともに前年を上回っています。

 

そして、被相続人数のうち相続税を申告した人の割合である課税割合は9.6%(令和3年分9.3%)と、やはり前年を上回っています。

 

ちなみに、各国税局別では、東京国税局管内(東京都・神奈川県・千葉県・山梨県)における課税割合が15.0%(令和3年分14.7%)となっています。

 

※令和3年分は令和3年11月1日から同4年10月31日まで、令和4年分は

令和4年11月1日から同5年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く。)データに基づいて作成されています。

2023.12.26更新

本年も大変お世話になり有難うございました。

 

TAO相続支援センターは以下の日程で休暇をいただきます。

期間 12月29日(金)から 1月4日(木)まで

 

期間中は大変ご迷惑をおかけ申し上げます。

頂きましたお問合せ等につきましては1月5日(水)より対応させていただきます。

よろしくお願い申し上げます。

2023.12.19更新

令和6年1月1日から暦年課税は相続税の生前贈与加算の年数が原則3年以内から7年以内に延長されます。

 

この改正により、毎年こつこつと110万円の贈与税非課税枠の範囲で妻や子に贈与した財産ですが、これからは相続の発生7年以内の贈与は相続財産に加算(持ち戻し)されます。

 

つまり、110万円を10年間に渡って計1,100万円贈与していた場合、これから、相続が発生すると770万円は持ち戻しされて相続財産となります。したがって、納税者にとっては不利な改正になりました。

 

相続時精算課税制度を選択すると累計2,500万円の非課税枠があり、贈与税は課税されませんが、相続が発生した時に贈与した財産は相続財産に加算(持ち戻し)されます。

 

しかし、令和6年1月1日以降、相続時精算課税制度に「年間110万円の基礎控除」が新たに創されます。

 

相続時精算課税制度に基礎控除が創設されることで、2,500万円の非課税枠とは別に年間110万円の基礎控除の範囲内であれば贈与税はかかりません

しかも相続財産に持ち戻しの対象にもならず、相続財産に加算する必要もありません。

 

ただし、相続時精算課税制度を初めて選択する場合は、贈与が基礎控除以下であっても贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに受贈者の戸籍謄本等を添付した「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

 

この基礎控除の創設により、相続時精算課税制度が使いやすくなりました。しかし、一方で、贈与する金額や期間によっては、暦年課税の方が有利になる場合もあります。
どちらを選択するかの判断は税理士等の専門家に相談されることをお勧め致します。

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