取引相場のない株式の評価
2016.07.21更新
取引相場のない株式とは非上場会社の株式のことをいいます。上場会社の株式の時価は取引市場において明確に決定されるのに対し、非上場会社の株式の時価の考えは様々です。土地の時価は「一物四価」といわれますが、非上場会社の株式の時価算出方法は4通りどころではありません。
そこで通達では、数ある算出方法のなかから3つの方法を選び、株主の区分と評価対象会社の規模により、いずれの方法を用いるかを決めました。取引相場のない株式は実業家タイプの資産家のメインとなる資産であり、相続のみならず、事業承継対策を考えるうえでも重要となります。まずは評価の概要から確認していきましょう。
①評価方法の種類
原則と特例
通達では取引相場のない株式の評価方法として、次の3つを定めています。
【ポイント】通達における株式の評価方法
a.類似業種比準方式→上場会社の株価と連動するような評価方法
b.純資産価額方式→会社の清算価値に着目した評価方法
c.配当還元方式→株主が受領する配当に着目した評価方法
これら3つの評価方法は任意に選択できるわけではありません。原則はa類似業種比準方式かb純資産価額方式(あるいはその両方)しか使えないのです。なぜなら、配当還元方式は会社の意思決定に影響を与えるほどの議決権を有せず、配当受領を期待するしかない少数株主の保有する株式を評価する場合に馴染む評価方法だからです。
実際には細かな判定基準があるのですが、中小企業の多くは身近な親族で保有しているケースが大半ですので、オーナー経営者や後継者の保有する株式の評価については原則的な評価方法が適用される、というイメージが大切です。
【ポイント】株式評価方法の原則と例外
・原則は類似業種比準方式と純資産価額方式
→オーナー経営者や後継者の保有する株式の評価に適用
・配当還元方式は例外
→少数株主(例えば従業員や取引先)の保有する株式の評価に適用