平成27年度税制改正のキーワードとなったのは、「高齢者」と「富裕層」でした。
まず「高齢者」に対しては、保有する資産を市場にまわして経済を活性化させるとともに、消費意欲の旺盛な若年層へ資産移転を促すためのメニューがずらりと並びました。その代表的なものが、「住宅取得資金の贈与税の非課税制度の期間延長」や「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の創設」などの各種贈与の非課税特例の拡充です。
もう一つの「富裕層」に対しては、さらなる監視強化を図るための改正が行われました。
その筆頭が「財産債務調書」です。これまで所得が2千万円超の人に提出が義務付けられていた財産債務明細書が名を変え、「財産の価額の合計額が3億円以上」、または、「有価証券などの金融資産1億円以上」が提出基準に加えられました。保有する有価証券の銘柄や財産の所在などの記載が必要とされており、富裕層はこれまで以上に資産の中身を把握されることになります。
また、富裕層には「国外転出時課税制度」が創設され、有価証券などの金融資産を1億円以上持つ人を対象に、出国(国内に住所等を有しなくなること)する段階で、国内で株式等を売却したものとみなして含み益に税率20%の所得税・個人住民税が課税されます。この制度は、出国先の非課税国・低税率国で金融資産を売却することで日本国内でのキャピタルゲイン課税を逃れるといった行為を防止する目的で創設されました。出国先で金融資産の売買を行わなければ、実質的に課税免除となるため、対象となる人はさほど多くないとみられていますが、今後対象は広がる可能性もありそうですので注視していく必要があります。