2023.05.19更新

相続や遺贈で取得した財産を特定の団体に寄付すると、寄付した財産に相当する金額について、相続税を非課税とする特例が定められています。(租税特別措置法第70条)

 

最近では「社会のために役立てたい」、「お世話になった組織に恩返しがしたい」ということで、相続財産を寄付するケースが増えていると言われています。この特例が、故人や相続人の意志を生かしながら相続税の節税にもなる一石二鳥の効果があることが、その理由なのかもしれません。

 

ただし、この特例を適用するためには次の4つの要件があり、それらを全て満たす必要があります。

 

①寄付した財産は相続や遺贈によって取得したものであること(相続や遺贈によって取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます)


②相続税の申告期限までに相続した財産を寄付すること


③寄付先が国、地方公共団体、その他の教育や科学の振興などに貢献することが顕著であると認められる「公益を目的とする」特定の法人(独立行政法人や社会福祉法人などの公益法人)であること


④被相続人の遺言による寄付ではないこと

 

この特例の適用に当たっては、特に、上記②の申告続きにあまり時間がないことや、同③の「公益の目的のため」の寄付に該当するかどうかという点の判断が難しいことから、この特例の適用をお考えの方は、まずは専門家である税理士に相談することをお勧めします。

2023.04.24更新

遺言執行者は、遺言により指定しますが、指定がない場合は、利害関係人が家庭裁判所に申し立てることで選任できます。

 

一般的に、遺言者の逝去により相続が開始されますが、遺言書があればその内容に従い財産が受け継がれます。この財産の引き渡しを行うのが遺言執行者です。

具体的には民法に次のとおり規定されています。

 

第1007条(遺言執行者の任務の開始)
1 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

 

第1011条(相続財産の目録の作成)
1遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。

 

上記のとおり、遺言内容の実現のために遺言執行者が負っている開示に関する義務は、相続人に対してのみに限定されており、その実現は遺言執行者の役割とされています。

したがって、基本的に相続人が遺言について何か義務を負うという仕組みにはなっておりませんので、仮に、法定相続人ではない受遺者がいた場合でも、相続人はその受遺者に遺言を開示する義務を負はないこととなります。

2023.04.20更新

相続又は遺贈により取得した被相続人の居住用家屋又はその敷地等を売却した時に最大3,000万円を譲渡所得から差し引くことができる特例(以下、「空家特例」)が、令和5年度税制改正大綱において4年間延長されました。

 

ただし、特例の適用条件等について、一部見直され、次のとおり改正されます。


①特別控除額の上限の縮小
相続人の数による制限が追加されました。被相続人の居住用不動産を取得した相続人の数が3人以上いれば、控除上限額が2,000万円に引き下がります。

 

②耐震リフォームや家屋の除去要件の緩和
相続により取得した家屋又はその敷地等の譲渡をした場合において、当該家屋が、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、以下の条件に該当すれば「空家特例」が適用できることとしました。

・耐震基準に適合することとなった場合
・家屋全部の取壊しもしくは除却がされ、またはその全部が滅失した場合

 

これまでは、この「空家特例」を使う場合、売主が耐震工事をしてから売る、又は更地にしてから売る必要がありました。しかし、今回の改正により、加えて買主が買った後に耐震工事を行う、或いは更地にするという場合にも「空家特例」が認められることになります。このように買主の裁量に任せて耐震工事などができることで、特例適用の使い勝手がとてもよくなりそうです。

 

なお、「空家特例」の適用期間は令和6年1月1日から令和9年12月31日までの譲渡について適用されます。

2023.03.14更新

相続が発生したら、最初に遺言書の有無を確認する必要があります。遺言書を無視して遺産分割協議を進めてしまうと、後から遺言書が見つかった際にトラブルになる可能性があるからです。

 

しかし、遺言書の中でも「自筆証書遺言書」の存否を明らかにするには、手間がかかることが多いようです。なぜなら、生前に故人が遺言書の有無やその保管場所について秘密にしているケースが多いからだといわれています。

 

そこで、以下、「自筆証書遺言書」の主な探し方を列挙してみました。


1. 故人が大切なものを保管している場所を探す
2. エンディングノートがあれば、保管場所が記載されていないか確認
3. 故人が生前付き合いのあった税理士・司法書士等に確認
4. 銀行の貸金庫(貸金庫の有無は、預金口座の通帳で利用料が引き落とされている)

 

なお、自筆証書遺言書が見つかったら開封しないで、家庭裁判所で検認をして貰う必要があります。検認を受けずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料の制裁を加えられる可能性もありますので注意が必要です。

 

ちなみに、最高裁判所の司法統計によれば、検認件数は平成24年が16、014件、平成30年17,487件、令和2年はコロナの影響で減少しましたが、令和3年19,576件と年々増加する傾向となっております。

2023.03.13更新

昨年12月16日に2023年度与党税制改正大綱が決定しました。

これにより生前贈与の持ち戻し期間が3年から7年に延長されました。

 

これまでは、死亡日以前3年間に贈与した財産は、相続の際、相続財産に持ち戻すことになっています。贈与した金額が110万円以下の贈与税基礎控除の範囲でも、死亡日以前3年以内であれば相続税の対象となります。

 

今回の改正では、令和6年1月1日以降の贈与により受けた贈与については、この持ち戻しの期間が7年に延長されます。ただし、緩和措置として、相続開始以前4年から7年の間の贈与については、総額で100万円が控除されます。相続対策としては、長生きするか、早め早めに贈与して財産を移転しておかなければ相続税の税負担が大きくなることとなります。

 

また、相続時精算課税制度は、大幅に拡充されました。

 

これまでは、制度適用後の少額な贈与については、その都度申告が必要であったものが、年間110万円までは不要となり非課税扱いとなります。しかも、この110万円については相続発生時に持ち戻しの対象となりません。

 

なお、相続時精算課税制度では、贈与時点の価額で相続税を計算しますが、贈与後に災害などによって価格が下落していても税額に反映されないというリスクがありました。今回の改正において災害で被った損害については価額から差し引くよう改められました。

2023.02.28更新

路線価は、相続税・贈与税で土地の評価額を計算するための基準として設定されている価額で、国税庁ホームページから全国各地の路線価を確認することができます。

 

しかしながら、路線価地域内の道路でも路線価が表示されていない道路はたくさん存在します。(例えば、建築基準法上の道路でない場合など)

しかし、路線価が表示されていない道路であっても、相続税や贈与税を算出するためには基準となる価額が必要となります。

 

こういう場合は、納税者が税務署に対して路線価を表示してほしい旨の申請をして、「特定路線価」と呼ばれる価額を定めてもらいます。

 

しかし、一旦、税務署が定めた特定路線価を申請すると、必ず、その特定路線価を使って土地の評価をしなければならなくなります。

 

したがって、本来の路線価の表示されている道路を活用して①評価する無道路地に準ずる評価方法や、②旗竿地として評価する方法などの「各種補正率等」を適用する余地を失ってしまうデメリットがあります。

 

特に、上記の「特定路線価」による評価額より、「各種補正率等」を適用して評価した方が低い評価額となることもありますので、その判断には注意が必要です。

2023.02.10更新

令和4年12月16日に「令和5年度与党税制改正大綱」の決定がなされました。この中でマンションの評価方法について、次のとおり適正化を検討することが記載されました。

 

「昨今、マンションに係る市場での売買価格と財産評価基本通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られている。

この現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。

そのため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討することとしたものである。」

 

このような乖離を原因として、現実に相続税の申告後に国税当局から、路線価等に基づく相続税評価額ではなく、鑑定評価等による時価で評価し直して課税処分をされるというケースも発生しています。

この結果、評価額の乖離に対する批判の高まりや、取引の手控えによる市場への影響を懸念する向きも懸念されます。

そのため、今後は、課税の公平を図りつつ、納税者の予見可能性を確保する観点からも、早期にマンションの評価に関する通達を見直す必要があるため、不動産業界関係者などを含む有識者の意見も丁寧に聴取しながら、通達改正を検討することとされています。

2023.01.27更新

令和4年12月に国税庁より、「令和3年分における相続税の申告事績の概要」が公表されました。

 

それによると、令和3年分における「被相続人数(死亡者数)」は、1,439,856人で令和2年分1,372,755人と比較して104.9%(+4.9ポイント)でした。

そのうち「相続税の申告書の提出に係る被相続人数」は134,275人で令和2年分120,372人と比較して111.6%(+11.6ポイント)でした。

 

また、亡くなった人に対する相続税の申告書の提出に係る人の割合、所謂、「課税割合」は、令和2年分の8.8%から令和3年分は9.3%(+0.5ポイント)になりました。

「課税割合」は、相続税基礎控除引下げの影響があった平成27年分の8.0%から年々増加の傾向が続いています。

 

その「課税価格の総額」は18兆5,774億円で、令和2年分16兆3,937億円と比較して113.3%で13.3ポイント増加しました。

 

なお、「申告税額の総額」は2兆4,421億円で、令和2年分の2兆915億円と比較して116.8%(+16.8ポイント)でした。

2023.01.24更新

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいというニーズが高まっています。
 このような土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。

この制度は、令和5年4月27日からスタートします。(法務省:HP)

 

なお、相続土地国庫帰属制度の開始前に相続などによって取得された土地についても、国庫帰属の対象となります。

 

ただし、次の「却下事由」「不承認事由」に該当する土地については、国庫への帰属が認められません。

 

(却下事由)(法第2条第3項)
 A建物がある土地
 B担保権や使用収益権が設定されている土地
 C他人の利用が予定されている土地
 D土壌汚染されている土地
 E境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(不承認事由)(法第5条第1項)
 A一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
 B土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
 C土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
 D隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 Eその他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 

また、この制度を適用して相続した土地の国庫帰属を申請する場合の申請者の負担金は、土地の種目に応じて、10年分の標準的な管理費用額を考慮して算定した額とされています(法10条1項)。

負担金の具体的な内容は次のとおりです。


① 宅地の場合は原則として20万円
※市街化区域・用途地域が指定されている地域内の土地は、面積に応じて計算
② 田、畑の場合は原則として20万円
※市街化区域・用途地域が指定されている地域、農用地区域、土地改良事業などの施工区域内の農地は、面積に応じて計算
③ 森林の場合は面積に応じて算定
④ その他(雑種地、原野など)の場合は20万円

 

なお、詳細は「法務省の相続土地国庫帰属法制度の負担金」を参照ください。
この制度を活用するには負担金の費用が発生しますので、それを回避する最良の解決法としては、土地の買い手が見つかることです。状況によっては、相続放棄も考えられますが、相続を放棄すると他の財産も相続することができなくなるデメリットがあります。
このように管理できない土地を相続される場合は、司法書士・弁護士など、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

2023.01.05更新

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

TAO税理士法人資産税グループ一同

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